Project story 01

つくばから世界へ。 あらたな領域への挑戦が、
フルヤ金属の今後を担う。

フルヤ金属の中で主に貴金属加工を行うつくば工場。今から約10年前の2013年、今までにない挑戦が始まった。それはアルミニウムにスカンジウムを混ぜたスパッタリングターゲットを開発すること。今後成長が期待できる分野でもあり、イリジウム・ルテニウムの経験が活かせるのではないか?ということで貴金属ではないアルミニウムを使った開発にとりかかる。結果2023年、今後のフルヤ金属を担う事業として、開発が終了しまさに量産化が始まる。今回はこのプロジェクトに関わった4人のキーマンと当時を振り返る。

  • フルヤ金属本社
    営業部
    K.M.
  • つくば工場
    研究開発部
    Y.S.
  • つくば工場
    研究開発部
    S.O.
  • つくば工場
    製造部
    M.O.

プロジェクトの経緯

Project History
2011
受注
~2013
外部パートナーと共同開発 つくば工場にて社内プロジェクト化
2014
アルミスカンジウムターゲット:試作品完成
2019
アルミスカンジウムターゲット:改良版開発完成
2020
量産化に向けた試作開始
2023
~
量産化開始
アルミスカンジウムターゲットとは?
窒化アルミニウムスカンジウム(AlScN)は、圧電材料(圧力と電気を相互に変換可能な「圧電効果」を持つ材料)として優れた特性を持っている。携帯電話の電波のフィルター用素子として使用が始まっている。フィルター用途以外にも微小マイクロフォンやメモリー素子などさまざまなアプリケーションへの応用が研究されている。AlScNの素子はスパッタリング法で形成されるため、アルミニウムとスカンジウムが混ざり合ったスパッタリングターゲットが必要となる。
01

はじまりはお客さまからのオファー。 その熱意に営業がまず動き出す

2011年、「大口径化がどこもできなくて困っている」次世代通信に必要な薄膜材料の相談からはじまった。「この材料は、ICTやDX化に伴い今後必要とされるものであり、他社が手がけていない製品でした。そのため、ビジネスチャンスと捉え、挑戦することにしました。最初は貴金属ではないため、アルミニウム加工の外部パートナーと共同で開発を始めました。」(営業) ———— しかし約3年間開発は続いたが良い結果は出なかった。 「失敗を目の当たりにすることで想像以上に難しい技術が必要だと実感しました。その時、社内のレアメタル加工の技術力が活かせるのではと思い、2013年につくば工場のメンバーと協力して社内プロジェクトとして進行することになります。」(営業)

「話を聞いた時は、貴金属加工のウチでできるの?という気持ちでしたが、お客さまと営業の熱意に動かされたという感じですね。」(研究開発S) 「この技術が確立されればこれから大きなビジネスにもなるとも感じました。入社して2〜3年目でしたので、貴金属メーカーに就職したのに、という気持ちは正直ありました。でも、お客さまのことやこれからのことを共有してもらい、少しずつ納得してはじまったプロジェクトでした。」(研究開発O)

02

トライ&エラーとデータの蓄積を繰り返しながら試作を進め、確実に前へ

扱ったことのない材料、まだ見たことのない製品。試行錯誤の日々がはじまった。「とにかくみんなで意見を出し合い、できることはすべて試してみました。」(開発技術S) ———— これまで培ってきた高い技術、未知のものを創り出すという挑戦的な精神が成功につながり、試作品は1年で完成。その後、性能評価を行うために大学の研究機関へ調査を依頼。その結果、性能は問題ないという評価であった。なれない素材であったがなんとかカタチにできた、とメンバー一同で喜んでいた。

しかし、「お客さまからは今以上に品質を上げた改良品を求められました。」(営業)

ひとつ結果が見えたらまた次の困難。原因の仮説を立て、改良を繰り返した。「この改良の過程で、約25パターンの試作品を作りました。」(研究開発O)

そして、その中のひとつの試作品からヒントを得る。 「これならいけるのではないか。ブレイクスルーが見えた瞬間でしたね。」(研究開発S)

そしてついに改良品が完成した。品質を向上してほしいというお客さまの要望から1年の時間が経過していた。

03

チーム一丸となって同じ目標に向かう

試作品ができて開発は終わりではない。実際に製品を製造する工程へ移行する。つくば工場にとってはここからが重要だ。「これまで扱ってない材料ですから、本当に難しかったし、プレッシャーもありました。」 製造するには安定が求められる。当たり前のように聞こえるが、かなりハードルが高かった。「従来の貴金属に関する知識は通用しない状況でしたが、自分たちを支えるものはこれまでの経験だけです。だからこそ、自分や仲間を信じて、粘り強く検証を続けました。」 さらに「ただ製造するのではなく、お客さまの熱い思い、それに応えたい営業の熱意、研究開発チームの努力、これらが私たち製造チームを支えています。」(製造) ———— これがまたフルヤの強さやスピード感を支えている。製造のフェーズであっても、営業や研究開発との連携は変わらない。 「試作品を製造する段階の際、予想と違う結果で上手くいかず、深夜までみんなで作業した日もありました。」(製造)

「いくら開発段階でうまくいっていても製造ラインで実際にうまくいくとは限らないので製造の過程となっても気は抜けなかったですね。」(研究開発) ———— これらの時間と気持ちを共有し、チーム一丸となって同じ目標に向かう。技術力やチャレンジ精神はもちろん、同じ気持ちを持っていることがフルヤの本当の強さかもしれない。そして、2022年に製品化が成功した。

「実は試作品の製造の最終工程で、どうしてもうまくいかない部分があったんです。この最後の工程をクリアしないと完成しない、そんなとき、各工程のメンバーが誰が呼ぶでもなく一人、また一人と集まり始め、気が付けばみんなでワイワイと意見を出し合っていたのを覚えています。結果、何とか原因を突き止めて解決できました。良いチームワークだな、と実感しました。」(製造)

04

フルヤ金属の今後を担う事業に。

2023年現在、量産化が始まろうとしている。「今回開発されたアルミスカンジウムターゲットの反響が非常に大きく、3年後の2026年頃にはフルヤのスパッタリングターゲット製品の1/3はこの製品になっていると予想しています。」(営業)

まさに主軸の製品となる。フルヤのネームバリューもますます世界へ向かっていく。「貴金属以外の材料の開発はこれまでほとんどありません。これまでの技術の横展開が成功したと言えます。これは会社としては非常に大きな成果ですし、材料の幅が今後もっと広がるかもしれないですね。」(研究開発)

「お客さまの要望から始まったプロジェクトでしたが、フルヤなら成し遂げることができると自信を持って言えます。」(営業)

市場や顧客のニーズを捉え、 早期から次世代規格の発展に取り組んできたこのチャレンジは、 情報通信デバイスに大きなブレイクスルーをもたらそうとしている。 フルヤ金属の素材開発は、これからも多くの最先端技術の発展に貢献し、 社会の繁栄につながることになる。

Project story

  • #CASE 02

    2050年カーボンニュートラルの実現を目指して環境省の実証事業に参画。 多くの人間をつなぐ水電解触媒プロジェクト。

Entry & internship