Project story 02

2050年カーボンニュートラルの実現を目指して環境省の実証事業に参画。 多くの人間をつなぐ水電解触媒プロジェクト。

大手メーカーからの依頼を受け2000年頃から水電解触媒の開発・製造を開始。その後、2015年にはクリーンエネルギーへの関心が急速に高まり、水電解触媒の開発が本格化。国と大学、ほかの企業とともに、オールジャパンプロジェクトに進展し、現在も続く。その独自の技術開発プロジェクトが、時代の変化とともにさまざまな形態を取りながら、多くの人間をつないでいく。今回はそんな未来へのバトンを繋いだプロジェクトを紹介する。2023年、土浦工場のニッチな製品が、世界中に注目されている。

  • フルヤ金属
    事業推進部
    Y.M.
  • 土浦工場
    研究開発部
    H.S.
  • 土浦工場
    研究開発部
    J.W.

プロジェクトの経緯

Project History
2000
酸素発生触媒(OER)の開発・生産
2015
環境保全に対する世界的な関心の高まりにより、酸素発生触媒(OER)触媒事業が本格化
20162016
~~
20202020
ナノ合金 プロジェクト、 京都大学との 共同開発
酸素発生触媒(OER)触媒プロジェクト (産総研と共同研究およびNEDO事業開始)
2020
~
2つの技術を集結。 ナノ合金技術を用いた 酸素発生触媒(OER)触媒の開発
2022
~
国や大学などと共同で行うオールジャパンプロジェクトに参画
2030
2030年の実用化を目指す
水電解触媒とは
水を電気分解し、グリーン水素を製造するプロセスに使用される触媒。再生可能エネルギーを利用した水素製造により、CO2排出量ゼロを実現する。 カーボンニュートラルの実現に向けて水電解技術に注目が集まっているが、高価な希少金属を大量に使用しなければいけない、という課題がある。
01

SDGsなんて単語すらない

はじまりは2000年。当時、クリーンエネルギーとして注目されていた水素エネルギーだが、その供給には火力が必要であり、クリーンではなかった。そこで、顧客からの要望によりイリジウムとルテニウムを使用した水電解触媒の研究と製造が始まることになる。当時はまだ「脱炭素化」や「SDGs」といった言葉もなく、そんなことを言っている企業や団体はほとんどなかった。 しかし、2015年になると環境保全は世界的なテーマとなり、水素エネルギーの実用化に向けた動きが加速。フルヤ内でも水電解触媒の開発を本格化し、酸化イリジウムを使用した研究を進めることとなる。

「フルヤの得意分野であるイリジウム、ルテニウムが活躍するわけですからこれは研究開発部門が主導で動かした方がいいなと。」同時に「このプロジェクトは将来かなり重要になってくるとも感じていました。」(研究開発) ———— 酸化イリジウムを用いた水電解触媒は2020年まで開発を続けることとなる。

02

新しい開発とこれまでの開発。 あらゆるノウハウを結集

2020年、世界はSDGs時代。環境保全が世界や国家レベルで推進される。日本では環境省の実証事業として、企業や大学を巻き込む一大プロジェクトがスタートした。脱炭素化に向けて国が本格的に動き出し、このプロジェクトにフルヤ金属も参画することとなる。

要求は高く、課題は多い。なんとイリジウムの使用量を従来の酸化イリジウムから1/40に減らし、同じ性能を求められた。しかし、ここで活きるのがフルヤの技術力とチャレンジ精神である。「研究開発と同時に市場調査や学会への参加などで情報収集をすることにも時間をかけました。一歩ずつ前に進むしかないですから。」(研究開発) ———— 一方、フルヤ金属では水電解触媒にかかわらず新しい開発プロジェクトが多数存在している。2015年当時、ナノ合金という素材の開発を京都大学の北川教授と共同開発するプロジェクトが動いていた。

「イリジウム使用量を1/40に下げるという要求に関し、ナノ合金製造技術を水電解触媒の開発に応用できないかと社内で意見が出て、2020年には共同プロジェクトとして推進されました。」(研究開発) その結果、フルヤ金属ならではの高効率な水電解触媒が開発され、 要求をクリアすることに成功しました。

高い技術力、チャレンジ精神、柔軟な思考。フルヤのすべてを集めた結果である。

03

2030年の実用化に向けて、若い力が活躍

現在、このプロジェクトは2030年の製造、実用化に向けて動き出している。量産のフェーズとなり、フルヤ内の若い力も次々と参加。

「開発とともにチームで仕事をしている実感があります。このプロジェクトに参加させてもらったのは入社3年目の頃です。」「文系出身ですので、文献を読んだり海外の情報を収集したりと勉強の日々。でも世界的にも注目されているプロジェクトに参加させてもらっているプライドみたいなものもあります。」(事業推進)

同じものを作る量産は簡単なようで難しい。「大学では優れたデータがあれば成功だったのですが、企業では量産に成功しなければビジネスとして成り立ちません。入社して2年目から関わっているこのプロジェクトは、その部分に難しさを感じています。」「社内のチームメンバーだけでなく、国や大学、他メーカーとも連携するため、難易度と責任感は大きい、だからこそやりがいを感じます。」(研究開発)

期待が高まっているプロジェクトだけに注目度も大きい。「社会貢献できる製品に関わっているのですけど、それを市場に投入しなければ意味がない。そこで初めて社会貢献が実現し、環境問題の解決に少し近づけると感じています。」(事業推進)

04

これまでの歴史をつむぎ、 これから創る未来へと

希少な技術力と、つねに挑戦を続ける。フルヤのこれまでの成果が、時代に合わせてさまざまなプロジェクトに発展した。どんな難題にも部署を越えて全員が一丸となって挑み続けられるのは、これまでの成果に対する自負から生まれるのだろうか。

「最先端の取り組みをしているという自負はあります。」「目標を持って世界を変えていきたい人たちと一緒に働きたいですね。」(研究開発)

「やりたいという気持ちがあればチャレンジさせてもらえる環境があります。学問の専攻や年齢など関係ありません。」(事業推進)

さまざまな新しいプロジェクトが動いている中で、これまでの技術、それを支える社員から、新しい技術、新しい人材に、研究はもとよりマインドも継承されている。新しい歴史をともに創る若い力へ、未来をつないでいる。

Project story

  • #CASE 01

    つくばから世界へ。 あらたな領域への挑戦が、フルヤ金属の今後を担う。

Entry & internship